学校検尿(2)血尿・蛋白尿があるといわれた!腎臓に病気があるの?

最終更新日: 2024年2月15日 by syounikaonline

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前回の記事「学校検尿(1)どうして学校で検尿をするの?」で、将来腎不全になる子どもたちを減らすという学校検尿の意義をご紹介しました。
今回の記事では検尿異常について具体的にご説明します。

学校検尿で異常を指摘された=腎臓の病気ではありません

学校検尿で異常を指摘されてしまったからといって必ずしも腎臓の病気ではありません。

学校検尿で異常を指摘された場合に慢性腎疾患である確率は、血尿単独の場合は4.7%、蛋白尿単独の場合は9.4%、血尿+蛋白尿両方の場合は69.3%と報告されています。

つまり、血尿単独の場合は治療が必要となる病気の可能性は低く、蛋白尿があったり、血尿・蛋白尿がともにみられるときにはより慢性腎疾患の可能性が高くなります。

血尿のみを指摘された場合の原因と対応

腎臓で作られた尿は尿管という細い管を通って、膀胱にたまり、尿道を通って外にでます。血尿は大きく腎臓由来のものと、尿管・膀胱・尿道由来のものとに分けられます。

このため、血尿が陽性となって病院を受診するときには、一度は超音波検査を行い、尿管・膀胱・尿道に結石などがないか、膀胱炎を疑うような膀胱の壁の肥厚(ひこう:肥えたりはれたりして厚くなること)がないかを確認します。また、子どもの場合はとてもまれですが、ときに腫瘍が血尿の原因となっていることもあります。

多くの場合、血尿は顕微鏡で観察しないとわからない程度のごく軽度のものですが、目でみて血尿とわかる強い血尿がみられることもあります。これを肉眼的血尿といいます。

肉眼的血尿の場合には、血尿の色調が腎臓由来のものか、尿管・膀胱・尿道由来のものかを見分ける参考になります。慢性腎炎などで腎臓から血尿がでている場合には、血管からすりぬけて変形した赤血球がでてくるので、尿は烏龍茶やコーラなど茶色い血尿となります。一方で尿管や膀胱、尿道からの血尿は赤血球が傷ついた組織からそのまま出てくるので、アセロラジュースのような鮮やかな赤い血尿がでます。

腎臓由来の血尿で最も多い原因は良性家族性血尿(基底膜菲薄化症候群)と言われるものです。私たちの腎臓では血液が基底膜という膜でろ過されて、いらない水分や老廃物が尿として外にだされます。生まれつきこの基底膜が薄いと本来はろ過されない赤血球がたまにすり抜けて尿の中に漏れ出ることがあります。良性家族性血尿は腎機能が悪くなることはないため、治療は必要ありません。

まれにアルポート症候群という遺伝性の腎臓病による基底膜の異常が原因で、血尿がでていることがあります。この疾患の場合にはしだいに蛋白尿もみられるようになり、腎機能が悪化してくるため、定期的な通院が必要です。家系内に原因不明の腎不全や難聴の家族が複数いる場合はこの疾患の可能性も考える必要があります。

また、ナットクラッカー現象といって、腎臓から戻ってくる血管が腹部の血管に圧迫されてうっ血することで、血尿がでることがあります。特にやせ型の思春期のお子さんに多くみられます。この場合は腎機能が悪くなることはなく、成長とともに改善することが多いため、治療は必要ありません。

血尿単独の場合でも軽い慢性腎炎の可能性はありますが、蛋白尿がみられてこなければ治療の必要がないことがほとんどであり、定期的な尿検査・血液検査のみで経過観察となります。

蛋白尿のみを指摘された場合の原因と対応

学校検尿で発見される蛋白尿単独陽性例の約半数は起立性蛋白尿といって、運動によってみられる蛋白尿です。特にやせ型の思春期のお子さんにみられることが多いのですが、幼少のお子さんでもみられることがあります。朝一番の尿(早朝尿)と受診時にとった尿(来院時尿)で蛋白尿の量に差が見られ、来院時尿の蛋白尿の方が多いのが特徴です。

思春期になると、尿を濃縮する機能が発達するために尿が濃くなって、水分摂取が少ないときや早朝尿で蛋白尿が陽性になることもよくありますが、これも病気ではありません。

蛋白尿が持続し、血液中の蛋白の値も下がってくる場合にはネフローゼ症候群という病気の可能性があります。この場合はステロイドによる治療が必要になります。
軽い蛋白尿のみがみられるときに注意が必要な疾患に、先天性腎尿路異常(CAKUT; congenital abnormalities of the kidney and urinary tract)という生まれつきの腎臓の構造の異常があります。この場合には徐々に腎機能が悪化して、将来腎不全になる可能性があるため、定期的な通院が必要になります。このため、蛋白尿で病院受診を薦められた場合には、一度は超音波検査を行って、腎臓の大きさや構造に異常がないかを確認し、血液検査で腎機能が問題ないかを確認する必要があります。

血尿+蛋白尿の両方を指摘された場合の原因と対応

血尿と蛋白尿が陽性の場合、起立性蛋白尿が否定されれば慢性腎疾患の可能性がかなり高くなります。先に説明したアルポート症候群やIgA腎症などの慢性腎炎の可能性があり、定期的な通院が必要になります。IgA腎症の場合にはステロイドや免疫抑制薬などによる治療が必要になることもあります。

 

学校検尿で血尿、蛋白尿を指摘されても、その多くは問題のないものが多いのですが、ごくまれに腎機能が悪化して腎不全に至る病気がみつかることもあります。学校検尿で受診を薦められた場合には、放置せずに医療機関を受診しましょう。

 

 

さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。

小児科オンラインはこれからもお子さんの腎臓に関する疑問を解決するために情報を発信していきます。

(小児科医 佐藤舞

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