小児の新型コロナウイルス感染症・ワクチンについて、複数回にわたり扱ってきましたが、今回は諸外国の状況について紹介します。
各国ですすむ、感染対策の規制緩和
世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルスについて、当面は緊急事態の宣言を続ける方針を発表しています。世界全体で死亡者が報告されている現状や、変異ウイルスのリスクが未知数であるという理由です(2022年10月時点)。
一方で世界各地で、新型コロナウイルスの感染防止を目的とした入国制限や、マスク着用義務など、新型コロナウイルス感染対策に関する種々の規制を撤廃する動きが出ています。
たとえば2022年11月時点で、感染状況や医療体制などを鑑みた「感染症の危険度」を示すレベルは、全ての欧州諸国において最も危険度が低い「レベル1(渡航注意)」となっています。
小児のワクチンは、各国で異なるスタンス
小児の新型コロナワクチンに対するスタンスも、各国様々です。
アメリカでは生後6ヶ月以後の全ての小児に対して接種を推奨しており、2021年12月の時点で、5〜11歳の小児に約870万回のワクチンが接種されています。
5〜11歳については、カナダ、フランス、イスラエル、EU各国も、すべての小児に接種を推奨しています(生後6ヶ月〜4歳に対する推奨は明記がありません)。
イギリス・ドイツでは、基礎疾患や重症化リスクを有する小児には推奨するとしています。
なお、「接種を受けるよう努めなければならない」という、予防接種法第9条に基づいた「努力義務」は、日本以外の主要国においては規定されていません。
また、デンマークでは2022年7月から、18歳未満における接種を段階的に中止しています。小児では重症化するリスクが低いこと、また成人も含めた国民全体のワクチン接種により集団免疫の効果が見込めることなどが理由です。
なお、デンマークにおける国民100人あたりの累計接種回数(すべての接種回数、すべての年齢をふくむ)は2022年12月時点で 224回 であり、主要先進国である日本 291回、カナダ 248回、イタリア 242回、ドイツ 228回に次ぐ接種回数です。
小児のワクチン接種率も、各国様々
アメリカにおける、生後6ヶ月から4歳に対する新型コロナワクチン接種は、2歳から4歳では8%、2歳未満では5.2%の接種率と報告されています(2022年10月)。
カナダでは生後6ヶ月〜4歳において、少なくとも1回接種した人が6.5%、計3回の接種を終えた人が1.0%です(2022年10月)。
5歳〜11歳において、2回接種を終えた割合は日本では約20%程度ですが、カナダは45%、デンマークは40%、フランスやアメリカで約30%などと報告されています(2022年8月)。
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。
小児科オンラインはこれからもお子さんの発達に関する疑問を解決するために情報を発信していきます。(本ジャーナルは2022年12月18日に執筆しました。以降の情報は反映できておりませんのでご了承ください。)
(小児科医 白井沙良子)
参考文献(すべて最終アクセス 2023年1月24日)
・NHK、新型コロナウイルス特設サイト
・ETIAS、【2023年1月最新】新型コロナウイルス ヨーロッパの入国制限と最新情報
・厚生労働省、小児を対象とした新型コロナワクチン諸外国の状況
・厚生労働省、生後6か月~4歳の小児への新型コロナワクチン初回接種に関する諸外国等の推奨状況
・日本小児科学会、5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方
・Danish Health Authority, No further plans of extensions to the covid-19 vaccination program
・Danish Health Authority, Vaccination against covid-19
・Our World in Data, COVID-19 vaccine doses administered per 100 people
・子供のワクチン接種状況の国際比較、千葉安佐子、公益財団法人東京財団政策研究所