最終更新日: 2024年2月15日 by syounikaonline
子どもの気になる行動が「チックなのではないか?」というご質問をよく頂きます。
今回はチックの特徴や一般的な経過、チックを理解する上でのたいせつなポイントについてまとめてみました。
チックには「運動チック」と「音声チック」があります
チックは「突発的、急速、反復性、非律動性(規則的ではない)の運動または発声」と定義されており、運動チックと音声チックに分けることができます。
運動チックは、例えば目をぎゅっとつむる、首や肩などをクイッと動かす、口を突き出す、などのような、短時間で、突然、がまんするのが難しく、好ましくない、規則的ではない反復的な運動です。
音声チックは、例えば「うっ」と声がでたり、鼻をすする、咳払いをする、などのような、声帯、口、鼻を通る空気の流れによって誘発される音を反映したものです。
さらにチックは、
- 明らかに目的がなく、素早くて単純な動作や音声の単純チック
- 持続時間がやや長く、一見すると意味があるように見える動きや音声である複雑チック
に分けることもできます。
成長とともに改善することが多い
チックは一般的には小児期(多くは5〜6歳)に初めて発症し、8〜12歳ごろに最も目立ち、18歳までに徐々に改善傾向となり、ほとんどの人は重大な生活の支障にはならなくなりますが、軽度のチックが残存することもあります。
診断のためには、これまでの詳しい経過に加えて、特に実際の運動・音声の様子が重要になります。可能であれば事前に、気になる運動・音声を動画で撮影しておくと、相談の際にとても参考になります。
周囲の関わりが、たいせつ
チックを理解する上でのたいせつなポイントとして、
- チックは、脳機能の発達の障害であり、親の育て方や本人の気持ちに問題があって起こるものではないこと
- チックは緊張が高まる時と同様に緊張が解けた時(リラックスした時)にも起こりやすいこと
- チックは増えたり減ったり、種類が変わったりを繰り返すことが多いので、わずかな変化で一喜一憂しないこと
- チックはやろうとしてやっているのでもないし、完全に抑えることはできないので、やめるように叱らないこと
- チックを本人の特徴の一つとして受容し、長所も含めた本人全体を考えて対応すること
などが挙げられます。
チックは時間とともに自然に改善する可能性があるので、チックであることが明らかになった場合、生活への支障が少なければ、チックのことを周囲が理解し、環境調整を行うことで、経過観察するというのも一つの方法です。
一方で、チックによる生活の支障が大きい場合は、認知行動療法などの専門的なアプローチや薬物療法により、症状をある程度コントロールできる可能性があります。
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。
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(小児科医 多門裕貴)
参考文献
多門裕貴, 立花良之(2023):チック. (小児科診療ガイドラインー最新の診療指針ー第5版, 加藤元博編) 総合医学社, 東京, pp.690-694.