公開日: 2025年3月3日
最終更新日: 2025年3月3日
子どもの肌トラブル。特に、紫や赤色のブツブツがいきなりできると心配ですよね。今回は「IgA血管炎」という病気について解説します。
「足に紫〜赤色のブツブツ」が代表的な症状

「IgA血管炎」とは、体の中にある抗体の一つである「IgA」によって、全身の小さな血管に炎症を引き起こす病気です。関与し、その結果として、以下のような症状が現れることが特徴です。
・紫斑(紫〜赤色の斑点)
・関節痛
・腹痛
IgA血管炎は紫斑から始まることが多いです。具体的には両足やお尻に現れて、触れることができる紫斑(直径数mmから1cmほどの斑点)です。
ただし約30%のお子さんは、紫斑が出る前に、腹痛や関節痛が現れるため、診断が難しい場合もあります。
発症のピークは4歳から6歳で、90%が10歳以下で発症します。
IgA血管炎のきっかけで多いのは「風邪」や「副鼻腔炎」

IgA血管炎は、風邪や中耳炎、副鼻腔炎などの感染症をきっかけに発症することが多いとされています。
具体的には、感染症によって異常なIgAが増加することで、皮膚、関節、消化器の小さな血管を傷つけて炎症を引き起こします。これによって、紫斑・関節痛・腹痛が生じるのです。
このため原因と考えられる感染症源(例:風邪、中耳炎、副鼻腔炎、扁桃炎、歯肉炎、虫歯など)も一緒に治療することが重要です。
関節痛には鎮痛剤、腹痛にはステロイドで治療

紫斑を直接治す薬はありません。しかし、通常は約4週間以内に消え、跡を残すこともほとんどありません。ただし、5-10%のお子さんでは2か月以上続くこともあります。
関節痛はIgA血管炎のお子さんの50-80%に見られ、主に膝や足首といった大きな関節が痛みます。
この痛みには、アセトアミノフェンなどの鎮痛薬を使用します。
腹痛はIgA血管炎の50-80%に見られる症状です。痛みが強くない場合は、鎮痛剤で対応できます。
ただし痛みが強い場合は入院が必要になることがあります。入院でステロイドの点滴治療を行うと多くは1〜2日以内に症状が改善します。
稀に腸重積(腸が一部重なり合う状態)を合併することがあり、この場合は緊急治療が必要です。腸重積については「見逃せない乳幼児の腹痛 〜腸重積ってどんな病気?」もご覧ください。
ほとんどの症状は改善、でも腎臓の合併症には注意

IgA血管炎の様々な症状は、発症から1か月以内にほとんど改善します。
ただし約25%のお子さんで再発する可能性があり、特に8歳以上で多いとされています。
特に注意が必要なのは、腎臓への影響です。IgA血管炎では、20-60%のお子さんに腎炎が合併します。
腎炎は発症から4週間以降に現れることが多いため、尿検査や腎臓エコーでの経過観察が重要です。腎臓の機能低下などが見られる場合は、腎臓専門医と相談のうえ、腎生検(腎臓の組織を調べる検査)を行い、診断や重症度を確認したうえで治療方針を決定します。
IgA血管炎は全身の小さな血管に炎症を起こし、紫斑・関節痛・腹痛を起こす病気です。
多くの場合、適切な治療を行えば1か月以内に症状は改善します。特に感染症の症状に加えて、上記の症状が見られる場合は、早期に疑い、治療することが大切です。
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。
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