公開日: 2025年10月22日
お子さんが「心室中隔欠損症(しんしつちゅうかくけっそんしょう)」と診断されると、驚いたり、不安になってしまいますよね。
この病気は、心臓の左右の部屋を隔てる壁に穴があいている状態で、全体の約2~3割を占める最も頻度の高い先天性心疾患です。穴の位置や大きさによって経過や必要な治療は異なります。
なお、似た名前の「心房中隔欠損(しんぼうちゅうかくけっそん)」とは穴の場所や症状の出方が異なります。心臓の正常構造や心房中隔欠損についてはこちらの記事も参考にしてください。
今回は、気をつけて見ておきたい症状や、治療の流れ、生活の中で知っておきたいことをお伝えします。
観察のポイント:哺乳量や体重の増え方がサイン

心室の壁の穴を通して、左心室から右心室、そして肺へより多くの血液が流れます。そのため全身に流れる血流は減少し、肺に流れる血流は増加します。このような血流の変化が続くと、心臓や肺に負担がかかり、徐々に症状も出てきます。
穴が小さい場合は、症状はあっても軽く、体重増加や哺乳にそれほど影響はありません。しかし、中等度以上になると、呼吸が速い、寝汗をかく、手足が冷たい、ミルクを飲むと疲れてしまう(哺乳に時間がかかる)といった症状(心不全症状)が出はじめ、徐々に体重増加が緩やかになります。そのため、哺乳量や体重増加が順調かどうかは非常に大切な指標になります。
なお、穴の位置によって主に4つのタイプ(漏斗部(流出部)型、傍膜様部型、流入部型、筋性部型)に分けられますが、いずれの場合も見られる症状はほぼ同じです。
治療のポイント:穴の大きさや症状で変わります

小さい穴であれば、手術や内服治療を行わなくても、通常の発育が見込まれます。
中等度以上の穴になると、まずは利尿剤などの薬で肺や心臓への負担(心不全症状)を減らして経過を見ます。それでも呼吸が速い、風邪を繰り返す、体重増加が悪いといった症状が続く場合には、乳児期早期に手術が必要な場合もあります。
予防のポイント:感染性心内膜炎とRSウイルスに注意

●感染性心内膜炎の予防
心室の壁に穴があると、血液中に細菌が入ったときに心室の壁に細菌が巣をつくることがあり、これを「感染性心内膜炎」といいます。一度細菌が巣をつくると抗生物質が効きにくく、非常に重症化します。
これを予防するため、歯科治療の前後や、ほかの病気で手術を受けるとき、大きなけがをしたときには、抗生物質の予防投与が必要です。
●RSウイルス感染症の予防
RSウイルス感染症は、2歳までに8割以上のお子さんがかかります。健康なお子さんでも1割程度が入院を必要としますが、特に乳幼児や先天性心疾患のあるお子さんが感染すると重症化することがあり、予防が大切です。
現在は、以下の予防法があります。
・シナジス(一般名:パリビズマブ):毎月1回の筋肉注射で予防します。
・ベイフォータス(一般名:ニルセビマブ):効果は約5か月持続します。シナジスを改良し効果が長続きするように作られています。
これらは心疾患により体重増加不良がある、利尿剤などのお薬を服用されている方が対象になります。
・アブリスボ(一般名:組換えRSウイルスワクチン):妊娠24~36週の間に1回筋肉注射することで、母体の免疫を通じて赤ちゃんに抗体が移行し、生後6か月間の最もリスクの高い時期に感染を防ぎます。
主治医と相談しながら、必要な予防を受けましょう。
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ小児科オンラインでご相談ください。