就学前のお子さんに三種混合とポリオワクチンの5回目接種を!

最終更新日: 2021年8月30日 by syounikaonline

就学前の年長さんに定期接種として麻疹・風疹ワクチンの2回目があるのは、皆さんご存じかと思います。

では、他にも、就学前の年長さんが接種しておくことがお勧めなワクチンがあるのはご存じでしょうか?それが、三種混合ワクチンとポリオワクチンの「5回目接種」です。

三種混合とポリオワクチンは「5回接種」が世界のスタンダードです

現在わが国では、ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオのワクチンを、四種混合ワクチン(定期接種)として、およそ1歳半までに合計4回接種しています。

しかし、ワクチン先進国である欧米諸国では、これらのワクチンは合計5回の接種が実施されています(1)。

「5回接種」はWHOでも推奨されており、さらには10代、あるいは成人でもう1回接種を行っている国もあります(1)。

このような世界のスタンダードと比べると、わが国の4回接種では、接種から時間がたつと徐々に抗体価が低下し、これらの感染症に対する免疫力の低下が不安視されています。

そこで、就学前に5回目の接種をすることにより、これらの感染症に対する抗体価を高く保つことができるのです。

わが国でも2018年8月より、小児科学会が就学前のお子さんに対する三種(ジフテリア・百日咳・破傷風)混合ワクチンとポリオワクチンの5回目接種の推奨を始めました(2021年7月時点ではすべて任意接種)(2)。

少しややこしいですが、三種混合ワクチンと単独のポリオワクチンを合わせると実質的には四種混合ワクチンと同じです。しかし、制度上、四種混合ワクチンは4回の定期接種のみに限定されているため、5回目は任意接種として三種混合ワクチンとポリオワクチン(単独)をそれぞれ接種することになります。

5回目の三種混合ワクチン接種で小学生の百日咳を防ぎましょう

百日咳は、百日咳菌によって引き起こされる呼吸器の感染症です。新生児やワクチンを打っていない乳児がかかると肺炎や脳症を起こし、後遺症を残したり致命的となることもある恐い病気です。

最近わが国において、百日咳の流行が、ワクチンによる抗体価が低下したと思われる小学生ぐらいの年長のお子さんや、成人を中心に発生していることが分かってきました(2)。

三種混合ワクチンの5回目接種を就学前に行うことで、お子さん自身や、さらには周りの小さい赤ちゃんを百日咳から守ることができるのです。

5回目のポリオワクチン接種で手足が麻痺しうるポリオの抗体価を高く保ちましょう

ポリオは、ポリオウイルスの感染により、重症な場合は手足の麻痺(まひ)を残すことがある感染症です。百日咳と同じく、ポリオについても、4回の接種を行っていても、5歳くらいから抗体価が低下してくることが知られています(2)。

わが国では、1981年以来、野生株のポリオによる患者さんは発生していません(2)が、世界の一部の国ではいまだに発生が報告されています(3)。ポリオウイルスが日本に持ち込まれるリスクは、今でも存在します。

ポリオワクチンを就学前に接種することで、下がりかけた抗体価を高く保つことができます。

 

新型コロナウイルスワクチンが行き渡ると、ふたたび人の往来は増えると考えられます。該当するお子さまがおられるご家族は、ぜひ三種混合ワクチンもポリオワクチンも「5回目接種」をご検討くださいね。

さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。

小児科オンラインはこれからもお子さんの予防接種、感染症に関する疑問を解決するために情報を発信していきます。

(小児科医 八木由奈)

参考文献

(1)World Health Organization: WHO vaccine-preventable diseases:monitoring system.2020 global summary.

(2)日本小児科学会:日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」(日本版Vaccine infomation statement (VIS)).

(3)World Health Organization: Poliomyelitis.

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