お子さんの偏食・少食。もしかして「アーフィッド(ARFID)」かもしれません

書いた人

王 謙之

小児科医

アーフィッドという病気を聞いたことはありますか?アーフィッドは食べる量が少ないために栄養不足を生じさせ、健康や日常生活に大きな影響を与える病気です。

けれども、アーフィッドはただの偏食と思われて見過ごされてしまうことも多いのが現実です。

では、どうすれば早めにこの異変に気づき、家族としてサポートできるのでしょうか?

「アーフィッド」とは食事のかたより・量の少なさから栄養障害を起こしうる病気

正式名称は回避・制限性食物摂取症(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder)で、英語の略称がARFIDなので、一般的にはアーフィッドと呼ばれています。

アーフィッドは、摂食障害の一種で、ごく少量しか食べなかったり、特定の食べ物を避けたりするのが特徴です。うまく食べられない理由から、主に次のような3つに分類されています。

  1. 食感やにおい、見た目に敏感で食べられない(感覚特性)
  2. 食事への関心が乏しく食欲が少ないために食事をおろそかにしてしまう(興味の偏り)
  3. お腹が不快になったり吐いてしまうことを恐れて食事を避ける(不安感)

この3つのどれかに当てはまることもあれば、それぞれの特徴が組み合わさることも多いです。そして、感覚の特性や興味の偏り、不安感の背景には、自閉スペクトラム症や不安症などが関わっていることもあります。

神経性やせ症(こちらの記事を参照)もアーフィッドに似て、食べる量が減る摂食障害です。ただしアーフィッドとちがい「食べることへの恐怖」や「体重増加の恐れ」が原因で食事を避けるのが神経性やせ症です。実際にはどちらなのかはっきりしなかったり、両方の特徴がある場合もありますが、どちらも「深刻な」栄養不足を起こしてしまうのは共通です。

「アーフィッド」は一般的な偏食や少食と違って、健康や生活に支障をきたす

たしかに、多くの子どもは多少なりとも好き嫌いがあります。

ただし通常の偏食であれば嫌いな食べ物以外に対しては食欲があり、栄養も十分に摂取できるため、成長や発達は正常に進みます。

アーフィッドの場合は、食べられるものの量や種類が極端に少なく、栄養状態が十分に保てないのです。そして栄養不足のせいで健康や生活に支障をきたすのが、好き嫌いとの一番の違いなのです。

長期的な「心身の健康」や「生活への影響」が大きい

アーフィッドは成長期の子どもや思春期にとくに多い病気です。そして、この時期はからだやこころをつくるために多くの栄養が必要です。

アーフィッドの影響で栄養不足が進むと、体重が増えづらかったり、減ってしまうので、低体重になります。すると体内の各臓器に不調を引き起こし、月経が止まったり、骨密度が低下したりします。場合によっては命が脅かされることもあります。

また、食事は他者との重要なコミュニケーションの場でもあるため、同じものを食べたり、一緒に食事をすることができないと、社会生活や人間関係にも影響が生じることがあります。

アーフィッドはまだ医療界でも新しい概念であり、十分に認識していない医療者も多い状況です。もし、食べる量や種類が極端に少なく、低体重や栄養不足が心配な場合は、ぜひご相談ください。

さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。

小児科オンラインはこれからも、お子さんの成長、学童、代謝、内分泌、思春期、栄養に関する疑問を解決するために情報を発信していきます。

(小児科医 王 謙之

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