小児科の外来で体格に関するご相談を受ける際、低身長や過体重に比べて、「やせているかも?」というご相談はやや少ない印象です。しかし、不健康なやせは子どもの生活の質に大きく関わります。
「やせ」は肥満度が-20%以下の状態
「やせている」というのはどの程度の状態を指すのでしょうか。
「やせ」の基準は、身長に対して体重が少ない状態を指し、肥満度*が-20%(幼児では-15%)以下とされています。この状態は身長が伸びるにも関わらず、体重が減る、あるいは体重が増えないために起こります。痩せていても、お子さんが元気に過ごしている場合には、ある程度進行するまでなかなか気づきにくいかもしれません。
*肥満度=(実際の体重 ― 標準体重)/標準体重×100 (%)
健康や発育に支障をきたす不健康なやせ
体格の推移の把握に役立つのが、成長曲線です。成長曲線は、母子手帳で目にされた方も多いと思いますが、最近は便利なアプリもあり、ご自宅で身長と体重の計測値を入力するだけで簡単に成長曲線を作成することができます。この成長曲線を見ると、身長と体重の標準からの隔たりはどの程度なのか、いつから体重が増えなくなったのか、身長の伸び方との関係などが一目瞭然です。
成長曲線でやせていることが確認できたら、健康状態には問題のない「体質性やせ」なのか、健康や発育に支障をきたしている「不健康やせ」なのかどうかを確認する必要があります。不健康やせには、その原因が特定できるもの(症候性やせ)があり、原因が判明次第その病気に対する治療を行います。
候補に上がる病気は多彩ですが、代表的なものとしては消化器疾患、心疾患、腎疾患、内分泌代謝疾患、重度の感染症や摂食障害のような精神疾患の場合もあります。原因によらず対応が遅くなると心身ともに長期にわたる治療が必要になる場合があり、お子さんの生活の質を著しく下げてしまいます。
不健康にやせていると、原因に関わらず様々な症状が起こります
健康に支障をきたすレベルのやせになると、疲れやすい、活気がない、手足が冷たい、心拍数が低い、頑固な便秘、体温が低い、背中に産毛が生える、身長が伸びにくい、思春期の体の変化がなかなか始まらない、女の子であれば初経が遅い、もしくは無月経になってしまうなどの症状が起こります。
これらは、原因疾患によらず、やせの程度が強いことで引き起こされる症状です。近年は小学生の頃から体型を気にして気軽にダイエットを始め過度にやせてしまうお子さんや、スポーツを頑張っていて摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが悪く無意識にやせてしまっているお子さんが増えています。
お子さん自身では体格や体調の変化に気づかないことも多いので、いかに周囲の大人が早めに気づいて受診に繋げ、早めに軌道修正することができるかがとても重要です。
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。
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(小児科医 庄司保子)