公開日: 2019年6月24日
最終更新日: 2026年5月12日
くる病とは、主にビタミンDが不足することによって起きる、骨の病気です。
戦前に多く見られた病気ですが、近年再び増加しており、2025年には日本小児科学会を通じて、乳児期のビタミンD欠乏を予防しましょうという提言がなされています。
ビタミンDが不足すると、くる病などの病気を引き起こします

ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収、骨の形成や免疫などに関わり、とても大切な働きをしています。
ビタミンDが不足すると、血液中のカルシウム濃度が低下して骨の発育が悪くなり、足が極端なO脚になったり、肋骨の骨が浮き出るように見えたり、頭の形が著しく変形したりします。
また、手足などが小刻みに震えるけいれん(テタニー)が起きることもあります。子どものこのような病態を「くる病」といいます。くる病は戦前の低栄養の時代に多く見られ、栄養の改善と共に減っていたのですが、最近再び増えてきていると言われています。
くる病のリスクとして、
(1)完全母乳栄養児(母乳にはビタミンDが少ないため)
(2)極端な偏食により食事からのビタミンD摂取が少ないこと
(3)日照時間の少ない地域に住んでいること
(4)日焼け止めの使い過ぎなどによる極端な紫外線対策により、太陽の光をほとんど浴びない生活
などの可能性が指摘されています。
ビタミンDを増やす方法①食事からの摂取

ビタミンDは、一部のキノコ類(乾燥きくらげ・干し椎茸など)や、魚(イワシ、鮭、うなぎ、さんま、いくら、たらこなど)や卵黄などに多く含まれています。
離乳期に摂取可能な具体例としては、鮭15gで5μg、卵黄1個で2.5μgのビタミンDの摂取が可能です(注1)。
穀物や果実、肉類にはほとんど含まれていません。また、母乳にはビタミンDはほとんど含まれていませんが、母乳栄養には大きなメリットがあるため、ビタミンDが入っていないからという理由で母乳を人工乳に変えることは避けましょう。
尚、胎児のビタミンD濃度は、母のビタミンD濃度にも比例するため、母親は、妊娠前からビタミンD不足を予防するようにしましょう。
ビタミンDを増やす方法②日光浴

人間の皮膚の下にはビタミンDの材料となる物質があり、太陽の光(紫外線)の作用によってビタミンDが作られます。皮膚がん予防のために紫外線対策は非常に重要ですが、全く日光を浴びないというような極端な紫外線対策は、ビタミンD不足を引き起こすことがあります。
特に、ビタミンDを体内で合成するために必要な紫外線(UVB)は、家屋に用いられている窓ガラスを透過しにくいため、適度に外に出て日光浴をすることが大切です。
食品などにビタミンDを添加している米国などの一部の国とは異なり、日本では必要となるビタミンDの全てを通常の食事で補うのは難しく、半分以上は紫外線によるビタミンD合成によってまかなわれています。
日光浴の目安時間は、地域や季節、時間帯や天気、肌の質などにより大きく異なるため一概には言えませんが、国立環境研究所の地球環境研究センターのホームページ ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報にて、詳しく知ることができます。
一例として、日本人に多い肌質(国際標準スキンタイプIII)の成人が、顔と両手の甲を太陽に向けて10μgのビタミンD量を体内で作るために必要な日光浴の時間は、茨城県つくば市で2025年8月2日午後12時(外気温33.2度)で10分(MED到達時間※は30分)、2026年1月19日午後1時(外気温9.1度)で40分(MED到達時間※は90分)でした。
※MED到達時間:Minimal Erythema Dose最少紅斑紫外線量 (皮膚が炎症を起こす最少の時間)に至るまでの時間で、それ以上の日光浴は避けたほうがいいという目安となる時間のこと。
ビタミンDのサプリメントも選択肢の一つ

食物からの摂取や適度な日光浴が難しい場合(冬季に高緯度地方で外での日光浴が難しい場合など)には、ビタミンDのサプリメントを利用する ことも一つの方法です。
注1)ビタミンDの1日必要摂取量については、日照時間や肌質によって体内で作られるビタミンDの量も異なるため、明確な基準を儲けることは難しいのですが、厚生労働省の日本人の食事摂取基準2025年版では、くる病予防の観点で、適度な日照を受ける環境にある場合の乳児におけるビタミンDの摂取目安量は1日あたり5μg(200IU)とされています(成人では9μg)。
<参考文献>
・乳児期のビタミンD欠乏の予防に関する提言.日本小児医療保険協議会栄養委員会 2025.
・日本小児内分泌学会. 1)ビタミンD 欠乏性くる病.
・国立環境研究所 地球環境研究センター ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報
・「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
・厚生労働省.授乳・離乳の支援ガイド2019年改訂版(案).
・環境省.紫外線環境保健マニュアル2015.
・小児内分泌学会.ビタミンD欠乏性くる病・低カルシウム血症の診断の手引き
・北中幸子.くる病の診断と治療.小児内科 2012年 4月.
・依藤亨.紫外線.小児内科 2012年 4月.
・専門医による小児内分泌学.日本小児内分泌学会編.
・新小児内分泌疾患の治療.診断と治療社.
・小児科診療のための病態生理2(2009)
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ小児科オンラインでご相談ください。



