熱せん妄(ねつせんもう)はいつ受診すべき?

熱せん妄(ねつせんもう)とは高熱に伴い意識がもうろうとしたり、つじつまの合わないことを言う、急に何かに怯え出すなど、普段とは明らかに異なる言動がみられる状態を指します1−3)。こどもはよく熱を出すので、熱せん妄もやはりこどもに多いです。具体的には1歳から4歳に最も多く、28%のこどもが過去に熱せん妄と思われる症状を経験したという報告があります1)

熱せん妄と脳症の違いは時間とともに改善するかどうか

熱せん妄の症状は一時的であって、時間とともに普段通りの様子に必ず戻ります。それでは、熱せん妄とそれ以外の原因、特に脳症や脳炎などの脳の病気とどのように区別をしたらいいのでしょうか?

結論としては、時間が経って意識の状態が改善するかを確認しないと、熱せん妄と脳症などの病気をはっきりと区別することは難しいことが多いです。言い換えると、熱せん妄が起きたばかりの時点では、熱せん妄かどうか多くの場合で明確な区別はできないだろうと思います。

熱せん妄の症状は一般的に数分から数十分程度で改善することが多く2)、逆に脳症は12時間から24時間以上意識障害(声掛けや肩を叩くなどの刺激に対して反応がない、あるいは鈍い状態)が続きます4、5)

要注意の症状があったり、

1時間たっても様子が改善しない場合は受診しましょう

それでは熱せん妄(と思われる状態)になった場合、どこまでは自宅で様子をみられるでしょうか?受診の目安はなんでしょうか?

ガイドラインなどで基準が明確に示されているわけではないですが、以下のような場合には受診すべきでしょう。

1)言動の異常以外の症状(例えばけいれんなど)がある

2)強く体をゆすったり強く肩を叩くなどの強い刺激を加えても反応がないか明らかに鈍い

3)反応が鈍くなっていくなど悪化傾向にある

4)悪化はないが1時間程度のうちに改善傾向にない

5)いったん改善したが翌日以降も普段と比べぼんやりする、会話が噛み合わないなどの様子がある

様子を見ている間に意識がはっきりし、いつも通りの反応に戻ってくれれば一安心です。ご自宅で引き続き様子をみて問題ないでしょう。

前述した熱せん妄の一般的な持続時間と脳症などに対する治療開始のタイミング4、5)を加味すると、記載した受診目安の症状がない場合に1時間から2時間程度様子をみるのがご自宅でできる無理のない対応ではないかと考えます。

もちろん受診目安に記載した状態があったとしても、結果として熱せん妄ではない場合もありますが、あえて自宅で様子をみる必要もないだろうと考えます。ぜひ小児科や救急外来を受診してご相談ください。また、現実には判断がつかないと感じる場合もあるでしょう。その時はどうぞ遠慮なく受診してご相談ください。

自宅では必ず大人が付き添い、体を冷やしながら様子を見ましょう

自宅で経過をみている間は大人の方が必ず付き添い、注意して様子をみてください。また熱せん妄は解熱することにより症状が改善することも多く、様子を見ている間に解熱剤を使ったり、首や脇、腰といった太い血管が通っている部分を冷やしたりして熱を下げるケアをしてあげるといいでしょう。

<参考文献>

1)Takahashi H, et al. An investigation on febrile delirium in childhood-In relation to febrile seizures. Brain Dev 1988;10:334–5.

2)Onoe S, Nishigaki T. EEG spectral analysis in children with febrile delirium. Brain Dev. 2004

3)Onoe S, Nishigaki T, Kosugi M. Usefulness of EEG recording for delirium in children with high fever (in Japanese). No To Hattatsu (Tokyo) 2003;35:29 – 35.

4)インフルエンザ脳症の診療戦略(平成30年)

5)小児急性脳症診療ガイドライン2023

さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。

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(小児科医 西田裕哉

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