最終更新日: 2024年2月15日 by syounikaonline
生まれつきの病気の中には、生後早い時期の採血で診断できるものがあります。新生児のうちに早めにみつけておくと、早めの治療により知能の遅れなどを防いだり、重い症状が出ないように注意して生活を送ることができます。
このような取り組みが新生児マススクリーニング(先天代謝異常症等検査)で、世界各国で行われています。新生児マススクリーニングは、日本に生まれてきた赤ちゃん全員が受けられる検査です。
足の裏から数滴の血液をとって調べます
新生児マススクリーニングでは、生後5日前後の赤ちゃんの足の裏から数滴の血液をろ紙にしみ込ませて、専門の検査機関に送り、問題となる病気がないか調べてもらいます。検査結果は、通常1ヶ月健診で説明されます。
もし再検査やすぐに精密検査が必要と判断された場合は、1ヶ月健診を待たずに個別に連絡があります。検査結果で異常が通知された場合には、すみやかに医療機関を受診しましょう。
栄養素の利用に関わる病気やホルモン異常の病気がわかります
新生児マススクリーニングで発見される病気は、「先天代謝異常症:栄養素を利用する過程に何らかの問題がある病気(下記(1)~(4))」と、「ホルモンに異常のある病気(下記(5)、(6))」とに大きく分けられます。
(1)アミノ酸代謝異常症
(2)有機酸代謝異常症
(3)脂肪酸代謝異常症
(4)糖質代謝異常症
(5)先天性甲状腺機能低下症
(6)先天性副腎過形成症
通常1ヶ月健診で手渡される「先天代謝異常等検査報告書」に、それぞれ結果が書かれています。(1)~(4)については、詳細な検査対象疾患が報告書の裏面に書かれています(自治体間で検査対象疾患が異なることがあります)。
特殊ミルク、食事療法、お薬などで治療が行われます
主治医の先生から専門医療機関への相談窓口が整備され、それぞれの病気に合わせた治療が速やかに行われます。
具体的な治療法としては、たとえばアミノ酸代謝異常症や有機酸代謝異常症では、体の中で利用できないアミノ酸が少ししか含まれていない特殊なミルクや食品による食事療法を行ったりします。また、病気によっては低血糖にならないように哺乳や食事の間隔に気をつけたり、有害な物質を体の外に出すためのお薬を飲んだりします。
ホルモンの異常である先天性甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンのお薬などで治療することができます。
これらは小児慢性特定疾患治療研究事業により自治体から医療費の助成が受けられます。
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。
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(小児科医 辛嶋涼子)