最終更新日: 2020年7月13日 by syounikaonline
「頭の形が良くないかも。ゆがんでる?」「大きくなったら自然に治る?」小さな赤ちゃんの頭の形、ご心配になりますよね。欧米では、SIDS(乳幼児突然死症候群)の予防目的でうつぶせ寝を避けるようになったため、頭の形の相談が増えてきていると言われています(1) 。今回は頭の形が気になった時、保護者の方はどう対応すれば良いか、参考文献(1)〜(6)に基づいて解説します。
頭の変形は向きぐせによることが多いですが、病気が隠れていることも
赤ちゃんは長い時間同じ姿勢でいると、頭蓋骨が同じ方向へ圧迫され続けるために頭蓋骨が変形してしまいます。頭の形は生まれつきのこともありますし、生まれる時の圧迫が原因で変形することもあります。また、その変形が原因でさらに向きぐせがつきやすくなることもあります。そのような向きぐせによる変形は位置的頭蓋骨変形症(いちてきとうがいこつへんけいしょう)と呼ばれています。
参考文献(1)(2)
ただ、なかには頭蓋骨早期癒合症(とうがいこつそうきゆごうしょう)などの病気が隠れている可能性があります。頭蓋骨早期癒合症は、本来成長に合わせて徐々にくっついていく頭蓋骨のつなぎ目が何らかの原因で通常よりも早くくっついてしまう病気で、手術が必要です。この病気は頭の形や耳の位置などに特徴がありますが、そのような特徴と異なることもあります(1-3)。頭の形が気になったときには、まず病気が隠れていないか診断してもらうことが大切です。
赤ちゃんが寝ている時は仰向けのまま顔の向きを変えましょう
位置的頭蓋変形において、変形が軽度の場合は姿勢の変化によって自然に頭の形が変わることもあります。できるだけ寝る時の向きぐせがつかないよう、寝ているときの赤ちゃんの顔の向きを仰向けのまま変えるようにしましょう。赤ちゃんは明るい方を好んで向きますのでベビーベットでの体の向きを交互に変えたり、哺乳瓶で授乳する場合も交互に頭の向きを変えるのもよい方法です。
参考文献(1)(4)
赤ちゃんがうつぶせで遊ぶ時間を一緒に過ごしましょう
また、日中赤ちゃんが起きているときにうつぶせの時間(tummy time)をとるようにするとよいかもしれません。変形の予防にも効果的です。着替えるときや授乳後にげっぷをさせた後など決まった時間にうつぶせにしたり、うつぶせで遊んであげる時間をつくります。床だけでなくお母さんやお父さんのお腹やお膝の上だと赤ちゃんも安心できます。
うつぶせを嫌がる赤ちゃんは、横向きにして目の前におもちゃなどを置いて遊んであげてください。時間は1回3〜5分を1日2〜3回から始め、首がすわるなど発達・成長とともに徐々に時間を長くするのがよいでしょう。
赤ちゃんがうつぶせの間は大人がすぐ近くにいることがとても大切です。SIDS(乳幼児突然死症候群)を防ぐため、赤ちゃんがうつぶせのまま寝てしまわないようくれぐれも注意してください。
参考文献(5)(6)
頭の形の治療をする場合は6ヶ月までに
変形の程度が重度の場合は自然に矯正されるのが難しいという報告があります。機能面で問題がなく見た目の問題で治療をご希望する場合、現時点で保険診療適応外になりますが、ヘルメットによる治療があります。これは、ヘルメットを毎日23時間つけることで、変形によって足りなくなっている部分を出ている部分よりも優先的に成長させる治療です。できるだけ早期の治療開始が効果的です。この治療の必要性があるかどうかは専門医の判断が必要です。
参考文献(1)(3)
また、必要性が低い場合はリハビリができる施設もあります。治療をご希望される場合、遅くとも生後6ヶ月までに(1,3)「頭の形外来」を受診されることをおすすめします。(専門医の判断によって6ヶ月を過ぎていても治療開始することはあります。)
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。
小児科オンラインはこれからもお子さんの頭や骨に関する疑問を解決するために情報を発信していきます。
(小児科医 岡野彩子)
<参考文献>
(1)Linz C, Kunz F, Böhm H, Schweitzer T. Positional Skull Deformities. Dtsch Arztebl Int. 2017 Aug 7;114(31-32):535-542.
(2)三輪点,吉田一成,坂本好昭.頭蓋骨早期癒合症.小児科臨床 71(増刊号): 2147-2152, 2018.
(3)藍原康雄,千葉謙太郎,川俣貴一.頭蓋骨変形.小児科診療 80(5): 545-549, 2017.
(4)Tummy Time for a Healthy Baby. National Institutes of Health.
(5)3 Tummy Time Activities to Try With Your Baby. American Academy of Pediatrics.
(6)Back to Sleep, Tummy to play. American Academy of Pediatrics.