最終更新日: 2024年2月15日 by syounikaonline
前編で離乳食を食べない理由について、食べるための能力の発達に個人差があることと、お子さん本人が食べようとする意欲が十分に湧かないお話をしました。
この後編では、食べようとする意欲を沸かせる「楽しい食事」についてお話ししていきます。
早めに手づかみ食べをさせてみましょう
かなり早い時期(生後6ヶ月ごろ)から手づかみ食べをさせてみましょう。多くの親御さんは離乳食をいつから、何を、どのように食べさせるか?で悩みます。つまり悩みのメインは「親の食べさせ方」になります。
しかし離乳食のメインは「お子さんが自分で何をどうやって食べるか」になります。順調に発達しているお子さんであれば、6ヶ月になると身の回りの興味のあるものに手を伸ばし、握り、なんでも口に持っていきます。その中で、どれが食物でどれがおもちゃなのかを触って握って口に運んで学びます。そしてそれはお子さんにとって、とても「楽しい」体験です。
親御さんとお子さんで「楽しい」食事の意味が異なります
「親御さんにとって楽しい食卓」のイメージは、お子さんがパクパクニコニコ離乳食を食べて、美味しいね!とお話しする、そんな場面を想像されると思います。
一方で「お子さんにとっての楽しい食卓」は、離乳食を手で掴み、手遊びし、ぐちゃぐちゃにすることであり、離乳食が口に運んで飲み込むものなのか、遊ぶためのものなのかはまだ理解できません。
ここにもまた親御さんとお子さんのズレが生じます。子どもは周りを見て、真似をして学ぶので、初日はぐちゃぐちゃに握り潰す遊びであっても、だんだんと親の真似をするようになり、徐々に食事というものを理解するようになります。お掃除は大変になりますが、お子さんの「楽しい」を優先する食事があっても良いかと思います。
食べる意欲を促す「楽しい食事」の具体例
食べる意欲を促す「楽しい食事」の具体例を紹介します。
まず、赤ちゃんの目の前に
(1)スプーン
(2)月齢にあった離乳食(手づかみ食べできるものが理想ですが、初期ならお粥や野菜ペースト)
(3)手づかみ食べできる赤ちゃん煎餅
を用意してみましょう。
周囲もお子さんもひどく汚れますので、拭き掃除グッズも準備すると良いですね。
(1)〜(3)のうち、どれでも構わないので、興味を持って触り、口に運んだらその日の目標はほぼ達成です。手を直接ペーストに手を入れて触った感触を楽しんだだけでも十分。その手を口に持って行き、いつもと違う味を感じられたら、目標を完全に達成です。
その際に、横で大人も一緒に食事をして、大人の食事が終わったら、お子さんの食事(食べ物遊び)も終了です。ポイントは、大人が離乳食をスプーンに乗せて、お子さんの口まで運ばないことです。無理に運ぶと拒絶することもあります。味をわからせようと無理矢理離乳食を舌に塗ったりすると、全力で拒絶するかもしれません。あくまで、赤ちゃんが自分で離乳食を触ることを学ぶ時間です。
お子さんに離乳食への興味を持ってもらえない時間が半年と長く続くかもしれません。しばらくは食べられる食物が数種類しかないかもしれません。その間、頻回の母乳やミルクが必要にもなります。でも、お子さんの食事以外の発達に問題がなければ見守っていて大丈夫です。来月の体重を気にするよりも、半年先に食べられるものが増えていることを期待しましょう。幼稚園に通う頃までに食事ができるようになることを目標にするくらい、ゆったり構えて良いかもしれません。(重度の栄養不良で、体重が何カ月も増えないまたは減っていく、発達が著しく遅れるなどの場合はこの限りではありません。)
私も娘が食べない日々は本当に大変で、毎日悩み、工夫し、いろいろ試し、日々が勉強でした。でも大丈夫。大人の想定する楽しい食事ができる日は、必ずやって来ます。
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。
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(小児科医 梶原久美子)