早産児の体重増加の考え方

最終更新日: 2024年4月3日 by syounikaonline

生まれた赤ちゃんが早産児、低出生体重児の場合、NICU退院後に様々な不安や心配をお持ちかと思います。早産で生まれても、目の前のお子さんは目覚ましいスピードで発達、発育しているのですが、ご両親が想像していたお産や子育てと違ってしまったことで、心配な気持ちが上回ってしまうことも多いでしょう。

今回は体重増加・発育の考え方について、低出生体重児保健指導マニュアルに沿ってお話ししていきたいと思います。

入院中と自宅での体重増加速度には違いがあります

NICUに入院中のお子さんは、口からの哺乳ではなく、チューブで胃や腸に直接母乳やミルクが注入されていることがあります。また、入院中の栄養に使用するのは、母乳に強化粉末を混ぜて栄養を強化したものであったり、低出生体重児に特化した栄養価の高いミルクが使用されていることがあります。そして、入院中の栄養摂取の量や時間はかなり厳密にコントロールされています。

NICUを退院後は、通常の母乳やミルクが使用され、飲んでいるもののカロリーや栄養価が変わります。また、ご家族と一緒に過ごすことができ、周りに興味を惹くものが増え、哺乳の時間帯もマチマチになるのが通常です。そうなると、哺乳よりも周囲への興味が優先されてしまう赤ちゃんもいます。

このような原因から、退院後に一旦体重が停滞するように見えるお子さんもいます。一見体重が停滞しているように見えても、周囲への興味が育つことは精神発達にとても重要です。

退院後の体重増加速度は、生まれた週数や早産の原因、合併症などで異なります

出生週数が34週〜36週で生まれたお子さんは後期早産児といい、1歳くらいまでに月齢に見合う体重に追いつき、母子手帳の成長曲線の曲線に沿ってくることが比較的多いです。(必ずしもみなさんが当てはまるわけではありません)

出生週数が33週未満であったり、SGA(small for gestational age)と呼ばれる週数相当の発育が認められず小さめで生まれたお子さんは、月齢に見合う体重に追いつくまでに1年以上の年月を要することがあります。

特に1500g未満で生まれたお子さんのNICU退院後の発育は、

・在胎期間(妊娠期間)に応じた体重で出生したか

・NICU退院時の修正月齢(出産予定日から数えた月齢)

・退院時の体格が修正月齢からみて標準範囲内か

といったことに影響されます。

退院後の体重増加は環境やお子さんの性質などによって、体重が停滞したり増えすぎたりなどの変動を認めることもあります。

一般にはNICU退院時の発育が修正週数相当であれば、一旦停滞したとしても3歳頃には修正月齢相当の発育に追い付くことが多いと考えられています。

目の前のお子さんに一番合った体重の増え方を見つけましょう

実は低出生体重児の望ましい発育(望ましい体重増加速度)については医学的に明確な結論がありません。

早産や低出生体重児または別の原因でNICU生活が長かったお子さんの場合、母子手帳の後ろに載っている成長曲線に沿った成長をしないことも多いです。

たとえ体重増加が停滞しているとしても、自己判断で母乳をミルクに変更したり、欲しがる以上に飲ませようとしたり、離乳食を増やそうとしてもうまくいかないこともあります。また、無理に栄養を増やすと、摂取したものがお子さんの筋肉や骨とならずに内臓脂肪が増えてしまい、かえって悪影響となることがあります。

お子さんの体重の増え方がご心配な場合、NICU退院後の主治医やこちらの小児科オンラインで質問してみるのも良いでしょう。

さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。

小児科オンラインはこれからもお子さんの成長、発達に関する疑問を解決するために情報を発信していきます。

(小児科医 梶原久美子

参考文献

小さく産まれた赤ちゃんへの保健指導のあり方に関する調査研究会. “低出生体重児保健指導マニュアル”. 厚生労働省. 

ハイリスク児フォローアップ研究会. ハイリスク児のフォローアップマニュアル小さく生まれた子どもたちへの支援 改訂第2. メジカルビュー社, 2018, 288p.

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