実は小児にもメタボリックシンドロームがあります

最終更新日: 2024年2月15日 by syounikaonline

「メタボリックシンドローム」とは、心血管病の発症リスクを上昇させるような、肥満を基盤とした代謝異常を指します。これは壮年(25~44歳)~中年(45~64歳)以降の大人に起こることだと思われている方が多いかと思いますが、実は小児にもメタボリックシンドロームがあります。

 

肥満や肥満の注意が必要なお子さんのうち10~25%がメタボリックシンドロームです

小児メタボリックシンドロームは、肥満のお子さんが増えてくるにつれて、より大きく問題視されるようになってきました。肥満のお子さんは1970年に3%であったのが、2000年には10%に増加し、その後は肥満に対する知識が広まったこともあり、増加がとまってきています。

小児メタボリックシンドロームは、中学生以上で腹囲が80㎝以上、小学生では75㎝以上(腹囲/身長>0.5)であることを必須とし、そのほかに血清脂質、血圧、空腹時血糖のいずれかが異常に高い場合に診断されます。(1)

一般小児集団の中の約1~2%、肥満や肥満の注意が必要なお子さんのうちの10~25%が該当するとされています。

内臓脂肪の蓄積がメタボリックシンドロームの発症に重要です

内臓脂肪が蓄積することによって脂質異常が起こり、またインスリン抵抗性を増すことによって心臓や血管系の疾患につながったり、2型糖尿病を発症したりするリスクが増大します。

小児期にメタボリックシンドロームがあると成人期での動脈硬化やそれに関連する疾患、2型糖尿病のリスクを増大することがわかっていますが、小児期のあいだにこういった疾患を発症することもあります。

頻度は高くないですが、何らかの原疾患があり、その結果肥満になっている場合もありますので、医療機関でしっかり診断を受けることが重要です。

また、肥満に関して、学校などの集団生活の中で心無い言葉をぶつけられるなどして、お子さんの心のケアが重要になることがあります。

早期に発見し多角的に介入することが大事です

小児の肥満やメタボリックシンドロームへの介入は、簡単にはいかないことも多いです。

介入の方針としては、

  • バランスの取れた食生活をする
  • 規則正しい生活を送る
  • 発育にあった運動を行う
  • 本人の積極性を高く保つようにサポートする

ということになります。

行動目標のためのチェックリストを作成するのも一つの良いやりかたです。

その際、お子さん自身が達成感を感じやすいように、にっこりマークやシールを用いるなど、目で見てわかるようなものを作成するとよいです。

また、本人の積極性がとても重要ですので、頭ごなしに批判したり、意味を伝えずにただ指示に従わせたりするのではなく、常にサポートすることを意識して声掛けするようにします。(2)

ご家庭での生活への介入が基本になりますが、往々にしてご家庭だけで解決できることではありません。

また、肥満かな?と思ってもどこに相談したらよいかわからず、時間が過ぎてしまうということもあると思います。かかりつけ医や肥満・代謝専門医を受診することだけでなく、保健所の栄養相談窓口などを利用することができます。ご家庭、学校を含めて多角的に介入することが望ましいです。

さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。

小児科オンラインはこれからもお子さんのメタボリックシンドロームに関する疑問を解決するために情報を発信していきます。

参考文献
(1) 小児内分泌学 日本小児内分泌学会. 2016
(2) 幼児肥満ガイド 日本小児医療保健協議会 栄養委員会 小児肥満小委員会. 2019

(小児科医 田村麻由子

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