百日咳からお子さんを守ろう

書いた人

武井 悠

小児科医

咳が長引き、つらい百日咳。また、予防接種前の小さな赤ちゃんが感染すると、命にもかかわる怖い呼吸器感染症でもあります。

百日咳のワクチンの効果は、長く続きません

百日咳を予防するワクチン(百日咳含有ワクチン)には、乳幼児期の定期接種になっている5種混合ワクチンと、任意接種である3種混合ワクチンがあります。

5種混合ワクチンは標準的には生後2か月からスタートして3回接種し、3回目から6か月あけて1歳になったら4回目を接種します。定期接種はこれで完了です1)。

しかし、百日咳にかかった患者さんの分布を年齢別にみると、定期接種を完了している5歳以降のお子さんでも感染が多いことが知られています2)。これは百日咳の予防効果が、数年経過すると、弱まってしまうからです。

※なお4種混合ワクチンも、百日咳を予防するワクチンの一つです。5種混合ワクチンが日本に導入された2024年5月以前に、すでに4種混合ワクチンを接種したお子さんは、引き続き4種混合ワクチンを接種することで、百日咳を予防できます。「5種混合ワクチンって何!?」もご覧ください。

生後3か月未満の百日咳は、突然死の原因にも

百日咳はその名の通り100日咳が続くといわれ、しつこくつらい咳が特徴的です。咳は夜間に多く、不眠の原因になりえます。

また、特にワクチンを接種していない生後3か月未満の赤ちゃんが感染した場合は、激しいせきこみによる呼吸困難や無呼吸になったり、場合によっては突然死の原因にもなる怖い病気です2)。

小学生になる前に、もう1回接種を

百日咳ワクチンを定期接種しても、数年経つと効果が薄れてしまいます。

よって小学生になる前に、百日咳を含む3種混合ワクチンを接種することが日本小児科学会から推奨されています。実際に生後6か月未満で百日咳になったお子さんの感染源の多くは兄弟などの家族です。まだワクチンが接種できない赤ちゃんや、免疫が十分でない赤ちゃんにうつさないためにも、小学生になる前に、百日咳含有ワクチンを追加接種することが必要です1)。

これは任意接種なので、自費負担で打つことになりますが、とても大切な接種です。

なお小学生になる前、つまり年長さんの年代で打っておきたいワクチンについては「小学校入学前にぜひとも接種しておきたい3つのワクチン」もご覧ください。

ちなみにアメリカでは、妊婦さんへの百日咳含有ワクチン接種も推奨されています3)。お母さんにワクチンを打つことで、まずお母さんの体内で、百日咳の抗体が作られます。するとお腹の中の赤ちゃんにも、胎盤を通じて百日咳の抗体をプレゼントすることができます。ワクチンが接種できるのは生後2か月からなので、それまでの間、お母さんからの百日咳の抗体によって、赤ちゃんが百日咳から守られるのです。

お子さん本人のため、また小さなきょうだいを守るため、百日咳含有ワクチンの接種、また小学生になる前の追加接種を行いましょう。

さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。

小児科オンラインはこれからもお子さんの予防接種、呼吸器、感染症、新生児に関する疑問を解決するために情報を発信していきます。

(小児科医 武井 悠

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