ミルク、ハチミツ、肉・魚、銀杏…こどもの食中毒予防ポイントを解説!

書いた人

佐伯 紗希

小児科医

「調乳中に寝ちゃった…ミルクは何時間後まで使える?」「1歳までハチミツはダメって聞いたけど、なぜ?」「ちょっと古い食材だけど、加熱すれば大丈夫かな?」 

こどもに与える飲み物や食事は、より慎重になりますよね。尽きない食の疑問にお答えします。

「調乳後2時間」をすぎたミルクは使わない

粉ミルクは最新の衛生基準でも完全な無菌にはできず、サカザキ菌が混入する恐れがあります。抵抗力の弱い乳児は特に注意が必要です。

よって「完全に沸騰させたあと、70度以上まで冷ましたお湯で調乳する」「調乳から摂取までの時間を最小限にする」ことを心がけましょう。

70度以上のお湯で調乳すればサカザキ菌は死滅しますが、わずかに残存した菌やその他の菌が増殖するリスクがあるので、調乳後2時間経過したもの、飲み残しは破棄しましょう。

家庭の場合温度変化が激しいため、冷蔵庫保存したものを再利用、というのも行わないほうが安全です。

ハチミツ・真空パック食品は「ボツリヌス菌」に注意

ハチミツには、ボツリヌス菌が含まれているリスクがあります。

腸内環境が未熟な1歳未満の小児は、芽胞を持つボツリヌス菌に汚染された食品を摂取すると、腸内で菌が増殖して毒素を産生し、「乳児ボツリヌス症」を発症することがあります。(「ハチミツは1歳まではNG」も参照ください。)

ボツリヌス菌は土壌や水に広く存在しています。ハチミツの他、常温保存できない真空パック、自家製缶詰・瓶詰・発酵食品などにも注意しましょう。

予防のために、原材料の十分な洗浄、冷蔵・冷凍での保存、十分な加熱(毒素は100度で数分以上の加熱で不活化します)を行いましょう。

肉・卵・魚介類は十分に加熱を

加熱が不十分な肉や卵、魚介類は、様々な微生物によって食中毒を引き起こします。

調理器具を別にし、中心部までしっかり加熱(多くは75度以上1分以上)しましょう。ハンバーグなどの挽き肉を使った料理は特に注意が必要です。

殺菌処理されていない飲料も要注意。生卵は3歳以上を目安にしましょう。

古い魚は加熱しても「ヒスタミン」による症状が出ることも

マグロやカジキ、サバやブリなどの魚は、温度管理が不十分な環境で保管したり、古くなったりすると、ヒスタミンが産生されアレルギー症状をきたすことがあります。

ヒスタミンは加熱しても分解されません。保存するなら冷凍しましょう。

子どもは銀杏は食べないほうが安全

銀杏には「年の数より多く食べるな」という言い伝えがあります。

医学的にも、銀杏はたくさん食べることで、けいれん、嘔吐、意識障害をきたすことがあり、死亡することもあります。

どんな調理法でもこのリスクは減らせず、小児は7個以上で中毒発症のおそれがあるとされています。

発症に至る個数は個人差もありますので、銀杏は基本的には大人になってからのお楽しみ、と考えた方が安全でしょう。

<参考文献>
・周産期医学2022年52巻増刊号, 東京医学社, 403-407, 2022
・小児内科, 51(9), 東京医学社, 1262-1266, 2019
・小児内科 53(6), 東京医学社, 995-996, 2021
・小児内科 46(9), 東京医学社, 1396-1398, 2014
・小児科診療 82(9), 診断と治療社,2019
・小児内科2020年52巻増刊号, 東京医学社, 946-950, 2020

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(小児科医 佐伯 紗希

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