最終更新日: 2024年3月27日 by syounikaonline
くる病とは、主にビタミンDが不足することによって起きる、骨の病気です。戦前に多く見られた病気ですが、近年再び増加しています。
ビタミンDが不足すると、くる病などの病気を引き起こします
ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収、骨の形成や免疫などに関わり、とても大切な働きをしています。ビタミンDが不足すると、血液中のカルシウム濃度が低下して骨の発育が悪くなり、足が極端なO脚になったり、肋骨の骨が浮き出るように見えたり、頭の形が著しく変形したりします。また、手足などが小刻みに震えるけいれん(テタニー)が起きることもあります。子どものこのような病態を「くる病」といいます。くる病は戦前の低栄養の時代に多く見られ、栄養の改善と共に減っていたのですが、最近再び増えてきていると言われています。
ビタミンDを増やすには、食事から摂取する、太陽の光をあびる
ビタミンDは、魚や卵・キノコ類などの食事から体内に取り込まれます。また、人間の皮膚の下にはビタミンDの材料となる物質があり、太陽の光(紫外線)の作用によってビタミンDが作られます。食品などにビタミンDを添加している米国などの一部の国とは異なり、日本では必要となるビタミンDの全てを通常の食事で補うのは難しく、半分以上は紫外線によるビタミンD合成によってまかなわれています。
くる病のリスクと予防策
くる病のリスクとして、
(1)完全母乳栄養児(母乳にはビタミンDが少ないため)
(2)極端な偏食により食事からのビタミンD摂取が少ないこと
(3)日照時間の少ない地域に住んでいること
(4)日焼け止めの使い過ぎなどによる極端な紫外線対策により、太陽の光をほとんどあびない生活
などの可能性が指摘されています。
妊娠期から授乳期にかけての、母親の体内のビタミンDの量も影響があるため、母親も妊娠前からのビタミンD不足を予防することが推奨されています。
離乳食には、魚、卵黄、干ししいたけや,きくらげを積極的に食べるようにすると良いでしょう。
また、皮膚がん予防のために紫外線対策は非常に重要ですが、全く日光を浴びないというような極端な紫外線対策は、ビタミンD不足を引き起こすことがあります。特に、ビタミンDを体内で合成するために必要な紫外線(UVB)は、家屋に用いられている窓ガラスを透過しにくいため、やはり適度に外に出て日光浴をすることが大切です。
日光浴の目安時間は、地域や季節、時間帯、肌の質などにより大きく異なるため一概には言えませんが、一例として、成人の場合、関東地方で夏の朝夕の涼しい時間帯であれば1日10分程度、冬の日中であれば1日22分程度の日光浴が必要とされています(参考文献1)。
くる病を予防するためには、妊娠・授乳中、および子どもの食事からのビタミンDの摂取を増やし、適度な紫外線対策を行うようにしましょう。食物からの摂取や適度な日光浴が難しい場合には、ビタミンDのサプリメントを利用する ことも一つの方法です。
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。
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(小児科医 橋本真理子)
<参考文献>