公開日: 2021年12月27日
最終更新日: 2025年3月8日
両親や兄姉にアレルギーがあると、生まれてくる赤ちゃんもアレルギーになってしまうのではないか、と心配されるのではないでしょうか。何か予防できる方法はないかと考える方も多いでしょう。
今回は食物アレルギーを起こしやすくする要因と予防についてお伝えします。
食物アレルギーになりやすい要因は複数あります
食物アレルギーのリスク因子とされているものは、
(1) 家族歴(両親または兄姉にアレルギーがある)
(2) アレルギー発症に関わる遺伝子を持っていること(フィラグリン遺伝子変異など)
(3) 皮膚バリア機能の低下
(4) アトピー性皮膚炎(湿疹)がある
(5) 環境中の食物アレルゲン
(6) 日光照射の不足(秋冬生まれ)、ビタミンD不足
などがあります。特に、アトピー性皮膚炎(湿疹)があることは重要なリスクとなることがわかっています。
湿疹があると、皮膚から食物タンパクが入りアレルギーの抗体ができてしまうかもしれません
最近の研究の結果から、食物のタンパクが荒れた皮膚(いわゆる湿疹で、バリア機能が低下した状態)の隙間から体に入りこみ、アレルギーの抗体を作る(皮膚感作を起こす)ことがわかってきています。抗体があるとその食物を食べた時にアレルギー症状が出る可能性があります。
赤ちゃんは皮膚が弱いので、多くの赤ちゃんで乳児湿疹は起こりますが、湿疹が重症であるとより皮膚感作を起こしやすくなります。それも生後3ヶ月という早い時点で、すでに皮膚感作を起こすリスクが高くなると報告されています。
スキンケアで皮膚をきれいな状態に保ちましょう
皮膚感作を防ぐために、生後早期から保湿剤を塗って湿疹を予防すること、湿疹ができてしまったらなるべく早く治療をして皮膚をつるつるにして、皮膚のバリア機能を保っておくことが重要です。
しかし、実はこれで本当に食物アレルギーを防げるかどうかはまだわかっていません。
とはいえ、他に食物アレルギーを予防できる方法は確立されていませんので、ひとつできることとして、リスク因子であるアトピー性皮膚炎にならないように、皮膚をきれいにしておくことをお勧めします。
スキンケアの詳しい方法は
「生後すぐから必要な保湿ケア〜正しく塗るための3つのポイント」
「原因が様々な赤ちゃんの皮膚トラブル〜まずは洗浄と保湿を」
「アトピー性皮膚炎のホームケアは保湿剤と入浴がポイント」
「湿疹治療のステロイドの塗り薬〜ぶり返しを防ぐ中止のタイミング」
などを参照してください。
離乳食は遅らせず、月齢に応じて進めていきましょう
アレルギーを起こしやすい食物でも、少量ずつ食べていると腸から吸収されて免疫ができ、食べられる体になっていきます。逆に、食べていないと皮膚感作が進んでしまって食物アレルギーの抗体ができてしまい、食物アレルギーを発症してしまう可能性があります。よって、「なんとなく心配」というだけで特定の食物の開始を遅らせるのはよくありません。月齢に応じて離乳食を進めていきましょう。
アレルギーの家族歴があったり、湿疹があって心配な場合は、アレルギー専門医に検査の必要性や食べ進め方を相談し、不必要な完全除去を続けるのは避けましょう。
「こどもの食物アレルギーの発症予防、その方法は誤解です!」も参照してください。
食物アレルギーは家族歴や遺伝子だけではなく、生後早期の皮膚の状態や環境など複数の要因が重なって起きると考えられます。確実に予防できる方法は現段階ではありませんが、生後早期からスキンケアをする、離乳食を漠然と遅らせないようにすることなどが重要です。心配な場合はアレルギー専門医に相談しましょう。
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。
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