起立性調節障害の薬物療法

書いた人

梶原 佑子

小児科医

朝が弱い、起き上がるのが大変な子どもを見て、起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)を心配している親御さんもおられるかと思います。今回は、ODの薬物療法や、見通しについて解説します。

ODの説明や日常生活でできる工夫については、「朝起きられない、学校への行き渋りー自律神経機能の低下が原因かも?」も参照ください。

重症度が中等症以上で薬物療法が考慮される

OD治療で最も重要なのは、本人や周囲の病気の理解と日常生活の工夫です。 それでも改善しない場合や、重症度が中等症以上の場合に、薬物療法が考慮されます。 重症度は「新起立試験」の結果と、「症状や日常生活状況」を基に、医師が軽症、中等症、重症を判定します。中等症の目安は、週1〜2回の遅刻や欠席があることです。

使用される主な薬の種類

小児科で一般的に使用される薬について説明します。

ミドドリン塩酸塩(メトリジンⓇ);血管を収縮させ、血圧を上げる薬です。ODでは第一選択として使用します。副作用は少なく、重篤なものもありません。起き上がる時間の30分〜1時間前に服用すると効果的です。

アメジニウムメチル硫酸塩(リズミックⓇ);交感神経の働きを活発にし、血圧を上げる薬。 副作用として動悸や頭痛、ほてりなどが見られることがあります。

プロプラノロール塩酸塩(インデラルⓇ);心拍数を低下させ、動悸を抑える薬。体位性頻脈症候群(起立時に心拍数が大きく増加し、動悸やふらつき、頭痛などが見られるタイプ)と診断された場合に使用します。

また、場合によっては漢方薬や睡眠薬も使用されることがあります。

薬の効果が現れるには時間がかかる

薬の効果が現れるまでには、1〜2週間ほどかかるため、すぐに中断しないことが大切です。 服薬後2か月経ってから最も良い効果が得られる、という研究報告もあります。 ただし、長期間の服用で薬に慣れると効果が弱まることがあるので、学校が休みの日は休薬するなどの工夫が必要になります。

多くの子どもで症状が良くなっていく

その他、学校との連携や、必要に応じて心理カウンセリングなども組み合わせて治療を行っていきます。

治療を始めてから1年後には約半数、2〜3年後には70〜80%の子どもが良くなっていると報告されています。重症の場合は、回復にさらに時間がかかることもありますが、多くの子どもは治療を続けることで、症状が徐々に改善していきます。

患者さんの20〜40%は、大人になったあとも立ちくらみや、朝の苦手さが少し残る場合がありますが、症状があっても支障が少なく日常生活を送れるようになっていきます。

治療に時間がかかるかもしれませんが、多くの子どもが良くなっていく病気です。焦らず、あきらめずに、お子さんを信じて支えていきましょう。小児科医も一緒にサポートします。不安なことや困ったことがあれば、どうぞ気軽にご相談くださいね。

<参考文献>
・日本小児心身医学会.小児心身医学会ガイドライン集改訂第2版.南江堂.2015.
・田中英高.子どものこころの発達を知るシリーズ05 心身症の子どもたちストレスからくる「からだの病気」.合同出版.2014.

さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。

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(小児科医 梶原 佑子

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