最終更新日: 2024年2月15日 by syounikaonline
子育てには何かとお金がかかりますが、なかでも「赤ちゃんの耳の聴こえの検査(新生児聴覚スクリーニング検査)」は、地域によって公費補助に差があり、どうしようかと悩まれている方からのご相談が寄せられています。この記事では、なぜこの検査が必要で、いつ、どのように検査が行われるのかについて、お伝えしていきます。
(1)1000人に1-2人の赤ちゃんは生まれつき耳が聴こえにくいため聴覚検査が必要です
赤ちゃんの脳は、生まれる前から五感からの刺激を受けて日々発達していきます。耳の聴こえ(聴覚)もその大切な五感の一つですが、1000人に1-2人の割合で、生まれつき耳が聴こえにくい状態のお子さんがいます。しかし、そのようなお子さんを外見で判断することは、なかなかできないため、聴覚検査が必要です。
耳の聴こえにくい状態が長く続くと、赤ちゃんの脳が受ける刺激が減ってしまうため、脳や言葉の発達に悪影響が出てしまう可能性があります。
(2)赤ちゃんの聴覚検査は生後3日以内に行うことが多いです
仮に赤ちゃんに生まれつき耳の聴こえにくさがあったとしても、できるだけ早く見つけてあげれば、補聴器をつけて、聞いたり話したりする練習を早くから始めること(早期療育)ができます。それによって、お子さんの持つコミュニケーションする力を最大限に伸ばしてあげることができます。
したがって、出生した産科や助産院、もしくは新生児集中治療室(NICU)を退院する前には、少なくとも耳の聞こえのスクリーニング検査を終えていることが推奨されています。
検査をする日齢は、赤ちゃんの状態にもよりますが、初回の検査は概ね生後3日以内、初回の検査で問題なしとならなかった場合の確認検査は、概ね生後一週間以内に行われることが多いです。
日本全国で既に9割近くの赤ちゃんが、この検査を受けていますが、国や自治体でも、全ての赤ちゃんが受けられるような体制作りを進めています。
(3)赤ちゃんの聴覚検査は眠っている間に短時間で実施できます
赤ちゃんの耳の聴こえの検査には、大きく分けて自動耳音響反射(自動OAE)と、自動聴性脳幹反応(自動ABR)の2種類あります。いずれも赤ちゃんが自然に眠っているタイミングを見計らって、小さな耳栓や電極のついたシール等を皮膚の表面につけて、音に対するわずかな反応を測定します。検査自体は5-10分くらいで終わり、針をさしたりするわけではないため、痛みや違和感などもありません。
(4)スクリーニング検査で必要と判断されたら耳鼻科の精密検査に進みます
産院や助産院、NICUで行われる耳の聴こえの検査は、「スクリーニング検査」といって、これだけで聴こえの問題のあるなしを即時に判定できるものではありません。聴こえにくさがあるかどうかを確定するためには、耳鼻科などでより精密な検査が必要です。「スクリーニング検査」は、そのような精密検査が必要なお子さんを探し出すための検査になります。
したがって、初回や確認検査を受けた後も、必要と判断された場合には、耳鼻科で適切な時期に精密検査を受け、早期診断、早期療育につなげていくことがとても大切です。
ご両親やご家族の声や様々な環境音は、赤ちゃんの健やかな成長発達にとって不可欠な刺激です。赤ちゃんがもつ潜在能力を最大限に発揮できるよう、耳の聴こえの検査を受けられることをお勧めします。
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。
小児科オンラインはこれからもお子さんの耳、検査に関する疑問を解決するために情報を発信していきます。
(小児科医 西澤和子)