最終更新日: 2024年2月15日 by syounikaonline
お子さんが気管支ぜんそくと診断されたとき、ぜんそく発作の予防のために吸入ステロイド薬を処方されることがあります。吸入ステロイド薬がどんなものなのか、安全なのかなどについて解説します。
吸入ステロイド薬は、ぜんそく発作予防の薬です
ぜんそくは呼吸をするときの空気の通り道(気道)に炎症が起こることで、気道が狭くなり、咳が出たり、ぜいぜいしたり、呼吸困難を引き起こす病気です。
体質に加えて、ハウスダストやダニなどのアレルゲンや、風邪などの感染、受動喫煙、大気汚染が原因となります。
発作時に治療をする以外に、日頃から炎症を抑える発作予防の治療が必要です(「ぜんそく発作は予防が一番」の記事もご参照ください)。
吸入ステロイド薬は、その発作予防の薬です。軽症の場合にはロイコトリエン受容体拮抗薬という薬の内服を行う場合もありますが、効果が不十分な場合(月に1回以上発作があるなど)には吸入ステロイド薬を開始します。
吸入ステロイド薬は、用法用量を守れば、長期で安全に使用できます
全身投与のステロイド(飲み薬・注射薬)は感染に弱くなるなどの副作用がありますが、吸入ステロイド薬は気道に直接働きかけるため、用法用量を守れば全身性の副作用は非常に少なく、長期に安全に使用できます。
ただし、吸入ステロイド薬を口の中に付着したままにしておくと、声が枯れたり、口の中にかびができることがあるので、吸入後はうがいをしましょう。
また、5〜13歳の小児で吸入ステロイド薬を4〜6年使用すると最終身長が平均 1.2cm 低かったという報告もあるので、医師の管理の下で適切な期間使用するのが良いでしょう。
吸入ステロイド薬は、医師の指示で減量・中止していきます
3ヶ月以上発作がなければ、聴診や肺機能検査の結果などから総合的に判断をして、吸入ステロイド薬を徐々に減量していき、中止を試みることがあります。
しかし、何かのきっかけで再燃することがあるため、減量、中止後も定期的な診察が必要です。
吸入ステロイド薬は保護者の判断でやめてはいけません。発作が出ていなくても、気道の炎症は残っているからです。
風邪をひいた時や、ダニやペットの毛などの刺激から発作が出る可能性があります。発作が起こると、気道の炎症が悪化して、気道もさらに狭くなってしまいます。
吸入ステロイド薬は、ぜんそく治療における最も有用な薬剤です。使用しないと発作が増え、日常生活の質が低下しますので、使用をおすすめします。
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。
小児科オンラインはこれからもお子さんのアレルギーやぜんそくに関する疑問を解決するために情報を発信していきます。
(小児科医 知念麻未)
参考文献
・一般社団法人日本小児アレルギー学会、小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020、協和企画
・Kelly HW et al, Effect of inhaled glucocorticoids in childhood on adult height, N Engl J Med, 2012;367:904-912.