「多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)」は耳慣れない病気かもしれません。
大きく分けて、常染色体顕性多発性嚢胞腎 (ADPKD)と常染色体潜性多発性嚢胞腎 (ARPKD)に分けられ、子どもでしばしば遭遇するのはARPKDです。
ADPKDとARPKDに関して簡単に解説していきます。
赤ちゃんの頃に見つかるのは、常染色体潜性多発性嚢胞腎 (ARPKD)
「胎児エコーで腎臓に嚢胞(のうほう)があると言われました」
こんな質問をしばしば受けます。腎臓に嚢胞(小さな袋状のもの)をつくる病気は様々ありますが、腎臓を専門とする小児科医はARPKDの可能性を考えます。ただしARPKDは腎臓に嚢胞をつくる他の病気と比べて、嚢胞が小さいことが特徴です。また腎臓そのもののサイズが大きいことも、特徴の1つです。
嚢胞があるため、腎臓のサイズ自体は大きいですが、腎臓として機能できる部分は少ないため、腎代替療法(腎臓の機能を肩代わりする治療)が必要になることがあります。腎代替療法のタイミングは出生後すぐ~大人になるまで様々です。
大人になってから見つかるのが、常染色体顕性多発性嚢胞腎 (ADPKD)
ADPKDは通常は大人の病気で、子どものうちに診断されることはかなり稀です。ARPKDとは異なり、ADPKDの嚢胞はサイズがかなり大きいです。嚢胞がおなかを圧迫して苦しい、という症状が出ることもあります。
親自身がADPKDと診断されている子どもに出会うことはしばしばありますが、現在、ADPKDを親に持つ子どもが、幼いうちからこまめに健診を受けることは推奨されていません。1つの目安としては、成人になったらスクリーニングの検査を受けましょう、と説明することが多いです。
治療薬としてはトルバプタンというお薬が効果があることが分かっています。
多発性嚢胞腎と言われたらどうすればよい?
まずは腎臓を専門とする先生の受診をしましょう。採血や採尿、超音波検査などの結果から総合的に診断をすることになります。
また、ご家族の腎臓のご病気の有無は大切な情報ですので必ず確認しておきましょう。さらに、ADPKDの場合には脳卒中、特にくも膜下出血の家族歴も大切ですので血のつながった家族の情報についてはまとめておいてもらえると診断の際に役立ちます。遺伝子検査を行うことも考えられますが、遺伝子検査についてはメリットとデメリットがありますので、検査を受ける前に必ず提案してくださった先生の説明をしっかり受けましょう。
さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。
小児科オンラインはこれからもお子さんの新生児、検査、泌尿器、腎臓に関する疑問を解決するために情報を発信していきます。
(小児科医 中谷 諒)