今でも多い結核感染症から子どもたちを守りましょう

最終更新日: 2021年5月17日 by syounikaonline

以前は国民病と呼ばれるほど多い病気であった結核感染症ですが、最近では話題になることが少なくなってきました。この記事では、現在の日本の状況、どんな人がかかりやすいのか、また小児結核の現況を紹介します。

結核は昔の病気ではありません

「結核なんて昔の病気」と思っている方も多いと思いますが、実は日本は世界の中ではいまだに「中まん延国」です。2019年は全国で14,460人の患者さんが新規登録されています。これは、10万人あたりで計算すると11.5人となり、低まん延国の定義である「10万人あたり10人以下」にあと一歩到達していません。

それでも、1950年代は10万人あたり約600人、1970年代は10万人あたり約100人の患者さんがいました。治療や予防接種の普及、栄養状態や生活環境の改善など色々な要素が影響し、患者数は順調に減ってきています。

発病するかどうかのカギは「免疫力」

結核菌は、結核患者さんがくしゃみや咳をすることで空気中に排出され、それを他の人が吸い込んで肺の奥まで到達することで「感染」が成立します。ただ、実は結核菌を吸い込んだとしても全員が「発病」して症状を認めるわけではありません。例え菌を吸い込んでも、多くの人は菌を抑え込むことができます。一方で、高齢者や栄養状態の悪い人、免疫力が低下する病気を患っている人など、菌に対する抵抗力が弱くなっている場合は、症状が出てきてしまいます。

一般的に、感染した人の5〜10%が発病し、結核の症状を認めると言われています。

少ない小児結核

では、小児に限ってみてみると、最近の結核の状況はどうなのでしょうか。2019年は0~14歳の新規登録数は38人でした。これは10万人あたりで計算すると0.2人となり、非常に低い数値と言えます。要因としては、BCGワクチンの接種率が高いことや接触者健診(結核患者の周囲の人達に対して行われる健診)が適切に行われていることなどが考えられます。

小児結核の発症数の特徴としては、0~2歳および中学生にピークがあり、また成人と同様に地域差があります(首都圏、近畿地方、東海地方に患者さんを多く認めます)。主に、父母や祖父母などの家族からの感染が原因となっています。

そのため、これからも子どもたちを結核から守っていくためには、大人たちの結核を減らしていくことが大切です。

さらに詳しく聞いてみたい方はぜひ直接ご相談ください。

小児科オンラインはこれからもお子さんの感染症に関する疑問を解決するために情報を発信していきます。

(小児科医 小林さより

※本ジャーナルは2021年5月17日に公開し、以降の情報は反映できておりませんのでご了承ください。

参考文献

(1)令和元年結核年報速報.公益財団法人結核予防会結核研究所疫学情報センター.

(2)大角晃弘.結核の統計2020を読むー結核低まん延状況における課題ー.複十字 No.394: 4-5, 2020.

(3)結核について.公益財団法人結核予防会.

(4)小児結核診療のてびき(改訂版)令和3年3月.

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